JOGMECの海洋資源調査船「白嶺」を見学
JOGMECの新海洋資源調査船「白嶺(はくれい)」と三次元物理探査船「資源(しげん)」の2隻を一度に見学できるチャンス!
JOGMEC(じょぐめっく)とは石油天然ガス・金属鉱物資源機構という独立行政法人。
日本の海域に埋蔵されている鉱物資源の探索・調査を行って金属資源の安定供給のためにがんばってる海洋資源のスペシャリスト。資源が乏しく輸入に頼りっぱなしの日本を資源大国に変えてくれるかもしれない組織なのだ。
海洋資源調査船「白嶺」を見学
「白嶺」は1月に完成したばかりの海洋資源調査船。
最適な船形・推進装置の船体に最新の調査機器を搭載した7つの研究室を持つまさに洋上の研究所!
白嶺を一緒に見学したのは3グループ13名。
鉱物資源に詳しそうなひと達、息子がJOGMECで働いているひと、関連した仕事をしてそうな夫婦、最後にボールペンをくれたJOGMECの一般見学者のひと、単純な質問ばかりしてるひと(オレ)、写真を撮りまくってるひと(これもオレ)。見学はあっという間の3時間半で楽しすぎだった!
まず海洋資源調査船「白嶺」に乗船。(船内は撮影禁止。写真で凄さを伝えられなくで残念!)
始めにプロモーションビデオを食堂で鑑賞。
この食堂は70名(総員)が一度に食事を摂れる広さ。テーブルは船が揺れても動かないように固定されていた。
「白嶺」は、三菱重工下関造船所で建造。去年のちょうど今頃に命名式と進水式だったようだ。珍しかったのが支綱切断(しこうせつだん)を男性がしてたこと。支綱切断はだいたい女性がしてる
ブリッジ
ここでは船長と機関長が自らおもてなし。「白嶺」の特徴を説明してくれた。
- 回転制御がしやすい電気推進式システムを採用
- 推進装置は全部で5つ
アジマス推進器×2基/昇降旋回式バウスラスター×1基
トンネル式バウスラスター×2基で動く。 - 4台の発電機には2段の防振ゴムを装備して船体に振動を伝えないようにしている。
その理由は船底にある音響ドームの送受波器に影響を与えないためだ。 - アジマス推進器と昇降旋回式バウスラスターは、360度あらゆる方向に船を動かせる。
- 2000mを超す掘削をするためには長時間、定点にいる必要がある。
何日を同じ位置に止めるために必要なのがDPS(自動船位保持システム)。 - DGPS(GPSの上級版)からの位置信号をうけて自動で船の位置を制御する。
- DPSで活躍するのがアジマス推進器と昇降旋回式バウスラスター。
- ブリッジが左右に50cmずつ張り出していて側面から監視・調査することができる。
第1研究室
第1研究室では観測全般とウインチ操作をする場所。
研究所というよりオペレーションルームな感じ。モニタがずらりと並んで海底の様子が見れたり、ジョイスティックでパワーグラブを操作したりするところだ。システムはWindows7を使っていた。
「白嶺」の仕事は深海艇鉱物資源を探す、見つける、広がりを確認、資源量を算定すること。深海艇鉱物資源とは海底熱水鉱床、コバルト・リッチ・クラスト、マンガン団塊の3つでそれそれ海底に分布している深度が分かれている。
調査の順番はまず音響調査。マルチビームエコーサンダーシステム、サブボトムプロファイラ、サイドスキャンソーナーでしらべる。
つぎは物理探査。地形図・地質の把握をする。遠隔操作、深海カメラ、無人潜水艇(ROV)で海底を調べる。この物理探査、かなり重要なミッションで海底の地質は固いのか?柔らかいのか?状態は?などその場に応じて掘削の方法が変わってくるから気を抜けないそうだ。
いかん…。専門用語的なのが出てきすぎて覚えきれない。
ちむにー。ちむにー。ってよく用語がよくでてきてみんな頷いていたけどオレは頷けず…。帰ってしらべてみると熱水噴出孔のことみたい。
後部甲板
後部甲板では若きJOGMECスタッフが説明。
口調、話のペース、内容ともにすっと理解できる判りやすい説明が素晴らしすぎ。まったく知らない人が理解できるように説明できるのは相当なレベル。
下船して自由撮影
下船して外から写真の撮影は自由。あちこちをバシャバシャ撮影する。
CTD採水器
海底資源調査に必要な環境調査をするための調査機器。開発には周囲に影響を与えないことを評価することも必要なのだ。
CTD採水器は 12Lの海水を採水する魔法瓶。全部で36本あって好きな水深で採取できる。
センサーがついていて伝導度、圧力、水温も計れるすぐれもの。
ギャロス
CTD採水器を海にいれるための装置「ギャロス」
え?聞き間違え?っと思うほどインパクトのあるなまえったけどギャロスでいいみたい。ギャロス、動くときにやかましそうな名前だ。
Aフレームクレーンと海底着座型掘削装置
“とも”にある、Aフレームクレーンと海底着座型掘削装置(BMS)とかパワーグラブ(FPG)を投入するためのクレーンで50t荷重の力持ち。脇にはあるのは2tの小さいクレーン。
Aフレームクレーンには滑車(シーブ)が沢山ついているBMSとかFPGを繋ぐ光動力複合ケーブルのためのものだ。
海底着座型掘削装置(BMS)。メカメカしくてかっこいい。
新型のBMS(Benthic Multi-coring System)でBMS50Mという。
50Mってのは掘削長が50mだから。水深3,000mまで潜って50m掘削できる新型だ。
ファインダー付きパワーグラグ(FPG)と呼ばれる試料を回収する装置もあった。
パワーグラグの下にはファインダーが付いていて海底を確認しながら海底表面の試料を回収できる。
パワーグラグには2つのタイプあって6本の爪で固い地質でもガッツリ回収するUFOキャッチャータイプと堆積物をバケツすくいのように回収するシェル型だ。
船上設置型掘削装置
デリックと呼ばれるやぐらは11階建てビル相当の高さ(35m)
このデリックで長さ9mのパイプを海底 2000mまで繋げて海底から400mも掘削できる。最大の2000mまで繋ぐのには15、6時間かかるそうだ。
デリックの下にはムーンプールと呼ばれる 7.5m ×7.5m の池がある。ここからパイプや海底着座型掘削装置、パワーグラブを投入・ 揚収できる。
第五研究室
盛り上がっていたのが第五研究室。
第五研究室では地質解析を行う研究室でコアサンプルの切断や撮影を行っているところ。実際に沖縄で採取してきたコアサンプルがごろごろ置いてあって触りたい放題。マンガン団塊とか重そうな名前の石は意外にもすげー軽かった。
正直なところコアサンプルにはあまり興味がなかったんだが他の見学者はコアサンプルに興味津々。
コアサンプルは無影灯で撮影。ほんとに影でないのかよと手をかざしてみるとほんとに影がでない。
白嶺の自由撮影時間
船内見学は以上、下船して船体を自由撮影。
「白嶺」のJOGMECのシンボルマークは地球をモチーフとしている。
3つの形は石油・ガス・金属鉱物資源を表現しているそうだ。3つのカラーは「自然(グリーン)」「大地(オレンジ)」「誠実(ブルー)」。
ファンネルにもマークが入っている。白嶺丸、第2白嶺丸でも使われていた日の丸に白の富士山を形 取ったものを受けついているぞ。
船首は普通の船と同じ見た目だけど喫水部分にバルバス・バウとサイドスラスターのマーク。
白嶺のカラーリング
見逃せないのが白嶺のデザイン。
喫水部分は深海をイメ ージする濃紺、船体は「白嶺」の白。船体にはデザイン化したJOGMECの頭文字の「J」を空色で描いている。
JOGMECの調査船コンビ、「白嶺」と「資源」の2ショット。
今回もひっくい目線で質問をしてきたぞ。
JOGMECのスタッフはどんな質問でも真摯に答えてくれた。
- 自動船位保持ってのは勝手に制御してくれるということか?
- そうだ。DGPS自動で制御される。
もちろんトラブル時は手動で制御する。 - どのくらいまで揺れてもだいじょぶなのか?
- 風速15m/s、波高3mだ。
- それを超えたらどうなるのだ?
- がんばって船位保持をする。
- 船位保持はどうやっているのだ?
- とものアジマスとおもてのバウスラスタの5つで制御する。
2つのアジマスと昇降旋回式バウスラスターの三角形の中心を
ずらさないような制御と思っていい。 - アジマススラスターの語源は魚のアジとマスか?
- 全く違う。アジマス(azimuth)は方位のことだ。
- BMSやFPGは、ケーブル一本で繋がるだけか?
- そうだ。
新BMSは38.1mmφ、FPGは26.4mmφの光・動力複合ケーブルで接続する。 - BMSは、平坦な海底にしか降ろせないのか?
- いや。傾斜を想定している。
下部にある3脚の接地脚が垂直に独立して伸縮するして段差を吸収する。
1mの段差、30度の平面傾斜地に設置可能だ。 - 6本爪のパワーグラグは、UFOキャッチャー式と思っていいか?
- かまわない。
横からでなく上からの視野でキャッチするから難易度は高い。 - 海底熱水鉱床、コバルト・リッチ・クラスト、マンガン団塊は
同じとこにあるのか? - 違う。それぞれ集まりやすい深度がある。
- 海底熱水鉱床は熱水というだけあってすごい熱いのか?
- いいや、そうでもない。
鉱物を含む熱水が冷却されて沈殿した鉱床だから熱水鉱床と呼んでいるのだ。
参考情報
- 参考情報 Youtube
最新鋭海洋調査船「白嶺」、メディア初公開
記事に書いた抜群の説明スタッフは1:23の彼! - 最新鋭の海洋資源探査船を公開 275億円で建造
三次元物理探査船「資源」編に続く。