トルコ地震に派遣された国際緊急援助隊(JDR)
トルコ地震で救助支援に日本政府から派遣された国際緊急援助隊(JDR)
JDRは海外の大規模な災害が発生したときに被災国に派遣されるチームです。
日本は、地震や台風など自然災害が多いために災害に対応するノウハウが蓄積されています。
そのノウハウを活かし、国際的な援助活動を行うために派遣される高い救助・救出の高い技術・スキルを持っているスペシャリスト集団が国際緊急援助隊(JDR)です。
JDR = Japan Disaster Releif
トルコ共和国の南東部カフラマンマラシュで日本時間 2月6日10時17分に発生した地震の援助のために派遣された救助チームを、マスコミ報道では、
トルコ政府からの要請で国際緊急援助チーム75名を派遣。第1陣の18人が羽田を出発した。
と報道。確かにその通りなんだけど、
要請あったから派遣?おせーよ。
は?たったの75名?
えーーっ、18人だけ?
って、思われちゃってる!?
マスコミ報道の仕方で世間がネガティブに捉えられているなら誠に遺憾である。
そこで国際緊急援助隊 救助チームについてくどくどと説明していきます。
トルコ地震に派遣された救助チームの誤解
要請から派遣じゃ遅くない?
遅くないんです!
これは、要請を受けてから派遣を決定する「要請主義」に基づいているから。
一方的な支援だと被災している国にさらなる混乱を招きかねません。
そのため国際緊急援助隊の派遣は、相手国または国際機関からの要請を受けてから行う決まりになっています。
要請があってから派遣することは、国連でも「援助は被災国の同意のもとに行う」と決議されていることで、国際的にスタンダードなフローなのです。
国際緊急援助の手順
① 被災国が在日本大使館に援助要請
② 駐在大使が日本の外務省に要請を通報
③ 外務省が関係省庁と協議
④ JICA に派遣命令
⑤ 救助チームの派遣
いつでも緊急援助できるように訓練してるとはいえ、地震発生からたったの12時間で先発隊が準備して出発しているので、派遣命令の前に JICA は調整をすすめていたのでは?と俺考。
救助チームの75名は少ないのか?
国際緊急援助隊には5つのチーム(救助・医療・専門家・感染症対策・自衛隊)があって被災国の要請に基づいてチームが派遣されます。
トルコ大地震に派遣されたの救助チーム。
被災地で救助者の捜索・発見・救出・応急処置・移送が主な任務です。
マスコミ報道で世界各国が多くの人数を派遣しているのと比べると日本の75名を少なく感じるかもしれませんが…。
少なくないんです!
この 75 名は国際緊急援助隊 救助チームの編成人数。はじめから役割がばっちりと決まっている人+犬たちなんです。
国際緊急援助隊 救助チームの編成
救助チームの編成は外務省、警察庁、消防庁、海上保安庁、医療班、構造評価専門家、JICA事務局がメンバーです。
警察庁は特殊救助隊(SRT)、消防庁は、ハイパーレスキュー隊、海上保安庁は特殊救難隊員が中心メンバーになると思われます。
救助チームは大きく分けて「指揮本部」と「レスキュー部隊」で構成されます。
救助チーム 指揮本部(27名)の標準構成
指揮本部は、外務省の職員が団長となり、消防庁・警察庁・海上保安庁と JICA の各 1名が副団長となります。
副団長の担当
それぞれの得意分野で援助活動を実施します。
消防庁は、計画・情報分析
警察庁は、広報・記録
海保は、安全管理
JICAは、連絡調整・ロジスティック
を担当します。
さらにチーフハンドラー、通信班、医療班、構造評価、業務調整で構成されます。
JICAの調整力
最も人員が多いのが業務調整をおこなうJICAの職員。
被災で混乱している国で他国の救助隊も多数活動している中で救助チームがパフォーマンスを発揮できるのは JICA の業務調整員の働きあってこそなのです。
役割 | 所属 | 人員 |
---|---|---|
副団長 | 消防庁 | 1 名 |
副団長 | 警察庁 | 1 名 |
副団長 | 海上保安庁 | 1 名 |
副団長 | JICA | 1 名 |
チーフハンドラー | 警察 | 1 名 |
通信班 | 警察 | 2 名 |
医療班 | 医師・看護師 | 5 名 |
構造評価 | 建築士 | 2 名 |
業務調整 | JICA | 12 名 |
救助チーム レスキュー部隊の標準構成
レスキュー部隊は、警察・消防・海保の隊員と警備犬。
中隊長の指揮の下、10名の小隊x2が 2 チームで救助活動を行います。さらに4人のハンドラーと 4 頭の警備犬もレスキュー部隊。ハンドラーと警備犬はペアです。
救助は災害発生から 72 時間が正念場と言われます。救助チームは、2チームで 24 時間 10 日間救助活動を行える体制になっています。
役割 | 所属 | 人員 |
---|---|---|
中隊長 | 警察・消防・海保 | 1 名 |
中隊長サポート | 警察・消防・海保 | 1 名 |
小隊 | 警察・消防・海保 | 10 名 |
小隊 | 警察・消防・海保 | 10 名 |
中隊長 | 警察・消防・海保 | 1 名 |
中隊長サポート | 警察・消防・海保 | 1 名 |
小隊 | 警察・消防・海保 | 10 名 |
小隊 | 警察・消防・海保 | 10 名 |
ハンドラー | 警察 | 4 名 |
警備犬 | 警察 | 4 頭 |
羽田空港から救助チームが出発
国際緊急援助隊(JDR) 救助チームの第 1陣は総務省消防庁 1名、東京消防庁 4名、海上保安庁 3名ほか全 18名で民間機のターキッシュ・エアラインズで6日夜に羽田空港からイスタンブールに出発。
トルコ行きの飛行機に合わせて準備したと思われます。
出発時間は定刻 22:50 で ボーイング777(TC-JJJ)で便名は THY199。
イスタンブールまでは約13時間のフライト。到着したのは日本時間 7日13:03 でした。
第 1陣 が18名だけの理由!?
第 1陣 18名は、ターキッシュ THY199便で確保できた座席だったと勝手に妄想。
JICAがターキッシュ THY199便の座席をできるだけ確保するために、めちゃめちゃ業務調整を頑張った気がします。
地震発生からたったの12時間で国際緊急援助隊の救助チームを編成して飛行機に乗せちゃうなんて JICA の調整力が半端ない!
さらに翌日7日のターキッシュ便も50席以上を確保。
国際緊急援助隊救助チームの第 2 陣も出発しました。
いつ派遣要請があっても準備ができている外務省、警察庁、消防庁、海上保安庁、医療班、構造評価専門家、JICA事務局のメンバーたちの初動は凄い。
国際緊急援助隊のワッペン
国際緊急援助隊の救助チームはシンボルカラーの青を基調とした日の丸マークのワッペンをつけています。国際緊急援助隊は警察・消防・海保・民間・JICA と所属が違っても同じユニフォームとワッペンで活動します。
トルコ地震に派遣された 救助チーム
国際緊急援助隊(JDR) 救助チームの第一陣は18名。
第1陣は、6日の夜にターキッシュ・エアラインズで羽田空港からイスタンブールに出発。
第二陣は、翌日7日のターキッシュ・エアラインズ THY199便でイスタンブールに出発しました。
捜索活動機材(電磁波人命捜査装置等)、救出活動機材(削岩機等)、収容活動機材(バスケット・ストレッチャー等)、安全管理機材(地震検知警報装置、発電機等)、医療資機材、食料など、救援に必要な機材類を持ち込み、迅速な緊急援助を行う予定。
救助チームは都市型捜索救助活動( USAR)を行います。
警察庁
災害対策課特殊救助隊員8名と警備第二課員5名(警備犬4頭)、通信職員1名。
災害対策課特殊救助隊(SRT)は災害専門の部隊、警備第二課は、警備犬を担当するハンドラーが所属する部門です。
消防庁
総務省消防庁 1名、東京消防庁 4名が先発隊、計 6名
東京消防庁のハイパーレスキュー隊を中心として各消防本部から編成された国際消防救助隊のメンバーが国際緊急救助隊として派遣されます。
海上保安庁
第3管区の特殊救難隊員を中心に、全国の管区から機動救難士ら 14 名が派遣。このうち 3 名は先発隊として 6 日に出発。
消防庁の国際消防救助隊とは
国際消防救助隊は、海外で大規模災害が発生した場合に、被災国の要請に応じて派遣される救助隊。
発足したのは1986(昭和61)年で国際緊急救助隊よりも歴史があります。
国際消防救助隊のメンバーは、高度な救助技術を有した全国 77 消防本部、599 名の消防隊員(2023年現在)から構成されています。東京消防庁の消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)は常時スタンバイで、他の全国の消防本部は輪番制になっています。
国際消防救助隊のワッペン
国際消防救助隊のシンボルは、緑色の地球儀を背景に「JF IRT」の文字、下には握手する二つの手が描かれたワッペン。
国際消防救助隊の正式名称
ワッペンのJF IRTの文字は国際消防救助隊の英語での正式名称。
JF IRT = International Rescue Team of Japanese Fire-Service の頭文字。
握手する二つの手は、 IRT = アイアールテー = 愛ある手 とも呼ばれて被災者に愛の手を差しのべる日本消防の気持ちが込められています。
国際消防救助隊の派遣
国際消防救助隊は、国際緊急援助隊 救助チームの一員として派遣されます。
国際緊急援助隊のユニフォームは JICA から支給される国際緊急援助隊の活動服で国際緊急援助隊のワッペンを着用するため JF IRT のワッペンをみれるのはレア!?

出典:国際協力機構 JICA